ご利用者の生活環境を把握するための
居宅訪問時のチェックポイント!
居宅訪問の機会を有効に使うために確認すべきポイントを、ご利用者の症状別・疾患別に理学療法士の視点でご紹介しています。

第10回 パーキンソン病のご利用者に「家でできる体操」を紹介しまょう
今回はパーキンソン病で運動障害が見られ、食事が飲み込みにくい方に対するアプローチです。
連載で紹介した口腔体操などを覚えてもらい、家でもやってもらうコツを紹介します。

嚥下体操を家での食事前の日課に
「のどぼとけ」と呼ばれる喉頭隆起(こうとうりゅうき)に触れると、唾液を飲み込むときに、上昇することがわかります。
この飲み込みに伴う反射を嚥下(えんげ)反射と言い、この反射がスムーズに出ることが食事時ではとても大切です。本誌で紹介した「唾液腺(だえきせん)のマッサージ」や「口周りの体操」を食事前の日課にしてください。
今回ご紹介する「唾液飲み込み練習」や「舌の体操」も有効です。

【唾液飲み込み練習】
のどぼとけに指先を当て、30秒間で何回も唾液を飲み込みます。
嚥下機能を評価する「反復唾液飲みこみテスト(RSST)」では、30秒間で唾液を 3 回以上飲み込めると「嚥下機能が正常」と判断されます。
このことを本人にも伝え、意識して練習してもらいましょう。

声掛け例
「30秒間に最低3回飲み込み動作が行えると合格です。家でも時間を測って練習してみてくださいね」

【舌の体操】
舌を大きく出し、上・下・左・右に動かす。
デイサービスでは「人前で舌を出したり、パタカラなどの発声の体操はしたくない」という人もいます。 家なら気兼ねなくできるため、ぜひ「舌の体操」もご自宅で行っていただくようにご家族にお願いしましょう。
声かけ例
「舌出しや声出し体操はデイサービスでは恥ずかしがられますが、家では練習してくださいね」

移乗について
本誌でもご紹介しましたが、パーキンソン病の方は移乗動作が苦手です。体を回旋させる動作がうまくできない人が多く、ご家族が食事のイスに座らせるのに困っているケースも多いです。 イスに移るときなどに、その目的物に直接向かおうとせず、目的物と反対側にお辞儀をして、お尻を上げる動作を練習することで、介助がうまくいくことがあります。 そういったことを家庭の環境に合わせてアドバイスしていきましょう。

アドバイス例
「このように目的物と反対側にイスを置き、それを持って立つことで目的のイスに移りやすいですよ」

目的物と反対側に別のイスを置き、肘掛けを持ちおじぎをする(前傾する)

肘掛けに体重をかけて腰を上げ、方向を変える

スタッフ(ご家族)はご利用者の大転子に手を添え、着座を介助する

ご家族にも観察日記をお願いする
薬と身体の動きについて
パーキンソン病の方の多くは、動きを良くするための薬が処方されています。ドーパミン製剤を代表にいくつか種類がありますので、これらを薬剤情報で確認しておきましょう。
また薬が変わった場合などは、服薬後の家庭での様子をご家族に見てもらうように声かけしていきます。 医師は薬を処方した後、それが合っているかを家庭生活まで見て確かめることができません。 「この薬になってから調子がいい」とか「前のほうがよかった」などご家族の意見とデイサービスでの様子などを総合して医師にフィードバックしていくのも、 生活場面にかかわるデイサービスの職員の重要な役割です。

声かけ例
「薬が変わりましたが、ご家庭での動作や気分などに変化がないか見てあげてくださいね」
「今度の受診のときに、今のご様子を先生に伝えてくださいね」など

リハビリについて
「パーキンソンの方で飲み込みが低下しかけてる人」については、月刊デイ2017年1月号「現場スタッフに役立つ 症状別・疾患別リハビリ」をご覧ください!





その他の記事

どうして居宅訪問が必要なの?
個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱやリハビリテーションマネージメント加算Ⅰ・Ⅱを算定するためにはご利用者の居宅を訪問し、在宅状況を確認することが義務付けられています。
居宅訪問はとても重要なことです。利用者の生活環境を知り、それに即したメニューを実施することで、機能訓練の効果は格段に上がります。

松本健史(まつもとたけふみ)
理学療法士/介護支援専門員/社会福祉学修士
NPO法人丹後福祉応援団勤務
大阪生まれ・関西大学法学部卒・九州リハビリテーション大学校卒業。
2014年本の出版、研修事業の「松本リハビリ研究所」設立。
著書に「認知症介護『その関わり方間違いです!』」(関西看護出版)「拘縮対応ケアハンドブック」(ナツメ社)「間違いだらけの生活機能訓練改善授業」(日総研)等がある。
介護従事者向けの「生活リハビリの達人」養成研修が話題。
●ホームページ
松本リハビリ研究所
●研修・原稿の依頼・問合せ
matumoto@helen.ocn.ne.jp