ご利用者の生活環境を把握するための
居宅訪問時のチェックポイント!
居宅訪問の機会を有効に使うために確認すべきポイントを、ご利用者の症状別・疾患別に理学療法士の視点でご紹介しています。

第8回 人工膝関節置換術後の生活リハビリメニュー
今回は人工膝関節の方が在宅生活を安全に過ごせるためのポイントを紹介します。
まず、居宅訪問時に確認するのは次の2点です。

1.膝が強く曲がるような環境になっていないか?
例えば、
・お風呂のイスが低い
・低いソファやベッドなどに座っている
もし、このような環境を確認した場合は、次のような提案をして環境を改善するよう働きかけましょう。
【提案例】
お風呂のイス…福祉用具の1割負担で、座面の高さを調整できる安全なイスの購入や
       レンタルが可能であることを伝える
低いソファやベッド…電話帳などをイスの脚の下に入れ、座面の高さを調整する

2.生活動作で膝に負担をかけていないか?
家では杖を使わずに移動しているという人も多く見受けられます。そのような方が安全な床生活を送れるように動作の練習を行うのも、デイサービスの大切な役割です。
特に人工膝関節を深く曲げたり、直接圧迫することがないように、動作の指導を行います。
【注意点】
次の点に配慮します。
・手術した膝が曲がりすぎていないか
・床に膝を直接着いて圧迫してないか


ベッドやイスなどから床に下りる場合の練習
(動作例)左膝の手術をされた方の場合

1)端座位になります。

2)座っているイスなどを支えにして、右側に体を向け、
  左膝が強く曲がらないように伸ばしながら右膝を床
  に着いて床まで下ります。


床での移動方法
床での動作は四つ這(ば)いではなく、お尻歩きやいざり動作を行い、膝関節を直接圧迫しないように注意します。
(悪い例)左膝が直接床についている

(良い例1)床移動(お尻歩き) 両手でお尻を浮かせながら、前へ移動

(良い例2)床移動(いざり動作) 左膝が曲がらないように立て、片手・片足を床に着いて移動


肥満気味の方へ生活アドバイスをする
肥満は変形性膝関節症の大敵です。運動や食事で体重を減らす方法をアドバイスしましょう。グラフなどを使用して、視覚的に分かりやすく体重変化を記録するとよいでしょう。

杖の使用・定期的な受診を勧める
人工膝関節で長く安定した生活を送るためには、杖の使用は特に重要です。杖で歩行すると、関節にかかる体重を3分の2に減らせます。 そのため人工関節の摩耗も抑えられ、長期間の使用が可能になります。最近は開発が進み、耐久性の高い人工関節が多いのですが以前は手術して10~15年で入れ替えが必要と言われていました。もし、その時期にさしかかってきているご利用者がいれば、関節の状態をしっかり確認し、 必要に応じて受診を勧めることも重要です。

エクステンションラグに注意

膝の人工関節の手術を受けた人の場合、注意が必要な膝の動きがあります。
それは、自力で膝を最終伸展域(まっすぐに伸びた状態)まで伸ばすことができるかどうか?という点です。
自分では最終域まで伸ばしたつもりでも、まだ関節が動く場合があります(下図)。これを「エクステンションラグ(伸ばしても伸ばしきれず余っている状態)」と言います。
この状態では、 歩行時に関節がぐらぐらと不安定になって摩耗してしまい、痛みが出たり、早く交換しなければならなくなります。
膝を伸ばしたときに、ラグ(余り)がないかを確認しましょう。ラグがあれば、最終伸展域でしっかり膝が固定されるよう、マッスルセッティング(本誌にて解説)を行っていく必要があります。


リハビリについて
「膝関節の痛み 人工関節術後の生活リハビリメニュー」については、月刊デイ2016年11月号「現場スタッフに役立つ 症状別・疾患別リハビリ」をご覧ください!


 


その他の記事

どうして居宅訪問が必要なの?
個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱやリハビリテーションマネージメント加算Ⅰ・Ⅱを算定するためにはご利用者の居宅を訪問し、在宅状況を確認することが義務付けられています。
居宅訪問はとても重要なことです。利用者の生活環境を知り、それに即したメニューを実施することで、機能訓練の効果は格段に上がります。

松本健史(まつもとたけふみ)
理学療法士/介護支援専門員/社会福祉学修士
NPO法人丹後福祉応援団勤務
大阪生まれ・関西大学法学部卒・九州リハビリテーション大学校卒業。
2014年本の出版、研修事業の「松本リハビリ研究所」設立。
著書に「認知症介護『その関わり方間違いです!』」(関西看護出版)「拘縮対応ケアハンドブック」(ナツメ社)「間違いだらけの生活機能訓練改善授業」(日総研)等がある。
介護従事者向けの「生活リハビリの達人」養成研修が話題。
●ホームページ
松本リハビリ研究所
●研修・原稿の依頼・問合せ
matumoto@helen.ocn.ne.jp