ご利用者の生活環境を把握するための
居宅訪問時のチェックポイント!
居宅訪問の機会を有効に使うために確認すべきポイントを、ご利用者の症状別・疾患別に理学療法士の視点でご紹介しています。

第6回 ご家族に伝えたい歩行介助のポイント
在宅で杖歩行をされている方を介助しているご家族へのポイントを紹介します。
本誌連載で紹介したように、人は歩行時に立脚期(りっきゃくき)と遊脚期(ゆうきゃくき)を繰り返し、左右に重心を移動させながら歩きます。

歩行時の重心移動
図は歩行している人を上から観察したものです。意外と人は左右に体を揺らして歩いています。
これは介助する人が押さえておきたいポイントです。

ご家族が行う歩行介助を見ていると、「転んだらいけない!」と支えることだけを意識してしまい、ご本人の重心移動を妨げるような介助となっていることがあります。
デイサービスでは、この重心移動をうまく引き出す視点を持って介助し、どの程度の支えが一番適しているかを見極め、ご家族に介助方法を伝えていくとよいでしょう。




●ご家族へのアドバイス 「重心移動を大切に」
送迎時、ご家族に実際に歩行介助する場面を見てもらい、「介助の時は、こんなふうに少し左右に余裕がある方が足を出しやすいんですよ。あまりきっちりと寄り添うとかえって歩きにくいものです」と伝えましょう。
✖ 悪い例 
介助者が体を密着し、脇をつかんでいる
【ポイント】
しっかり脇を固めて介助しているが、重心移動が制限されるため、本人は歩きにくい
○ 良い例 
介助者は少し距離をとり、重心移動がしやすいように介助しながら行う。右手は脇の下に入れる。ただし差し込むだけで力を入れない
【ポイント】
介助者は少し距離をとったほうが、重心移動が行えるため歩行しやすくなる

●ご家族へのアドバイス 声かけは「杖・イチ(患足)・ニー(健足)」

片麻痺の方の場合、「麻痺の無い方(健側)」で杖を持ちます。
杖歩行が不安定な場合は、麻痺側の足を出し、その足に揃えるように健側の足を出す「前揃え歩行」を練習します。
杖を前方につき、杖と反対側の足(患足)を杖先の隣まで踏み出します。それから杖側の足(健足)を反対側の足に揃えます。
「杖→患足→健足」と繰り返します。


この歩行がデイサービスで安定してきたら、在宅でも行えるよう練習していきます。

【声かけ例】(左片麻痺者が在宅で歩行する場合)
送迎時にご家族に介助方法と声かけの方法を見てもらいながら
「足を大きく出すと不安定になる場合があるので、出した足を越えないように揃えて歩行するといいですよ」とお伝えし、「杖→左→右、杖→左→右」と声かけを行います。
リズムをとりやすいようにご家族には「『杖・イチ・ニー 、杖・イチ・ニー』と声をかけるといいですよ」とお伝えします。

●四点杖の長所

在宅生活で歩行する場合、一般的な杖よりも四点杖の方が使いやすい場合があります。
一本杖はどこかに立て掛けようとすると倒れてしまうという点が使いにくいのですが、 在宅生活では杖から手を離して行う生活動作が多いので、床に置くと自立する四点杖が便利です。

片麻痺の方が杖から手を放して行う生活動作の例
  • 歩行してトイレのドアを開ける
  • テーブル上に置かれたコップを持ち、飲み物を飲む

こうした動作のたびにいちいち杖を立て掛ける場所を探すのはけっこうなストレスです。 また、もし杖が倒れたら、それを拾おうとして自分も転倒してしまう、といったリスクも高まります。
四点杖にはそういったリスクがありませんので、こういう利点をご家族に紹介するのもよいでしょう。

【声かけ例】
「ドアを開けたりするときに便利な杖があります。デイサービスで試したら使いやすそうでした。 介護保険でレンタルできるので、ケアマネジャーさんに相談してみてください」



居宅訪問時に確認するポイント
片麻痺のご利用者の居宅訪問時に見るポイントは、その方がどのように屋内を移動しているかによって異なります。
①屋内でも杖で歩行している場合
居宅訪問時は次の点を確認しておきましょう。

  • 廊下の幅はご利用者の歩行に無理がないか?

杖歩行者は、歩行するのに通常70〜90cmの幅が必要です。
十分なスペースがあるか確認します

特に今回、本誌で紹介した分回(ぶんまわ)し歩行のある方の場合、さらに横幅が必要です。 デイサービスで歩行時に必要な幅を計測し、在宅で確保できているか確認します。
【声かけ例】
「〇〇さんは歩行するのに横幅が90cm必要です。ご自宅の中でもそのスペースが確保できるように、配慮してあげてくださいね」
②屋内では伝い歩きをしている場合
家の中では杖を使用せず、家具を伝って歩いている高齢者も多いです。
そういう方の場合はデイサービスでも在宅と似た環境を用意し、伝い歩きの練習も機能訓練のメニューに加えます。 居宅訪問時は次の点を確認しておきましょう。

  • 家でいつも通る動線に家具や手すりがあるか?
  • 伝い歩きで安全に移動が可能か?

不十分な場合は、手すりの設置や家具の配置について検討していただくよう、ご家族にお願いします。
【声かけ例】
「〇〇さんは伝い歩きで移動されています。家で転倒しないように、よく行く場所には伝いやすい家具や手すりなどを用意してあげると安全です」



リハビリについて
「片麻痺者の方の分回し(ぶんまわし)歩行・反張膝(はんちょうひざ)への対応」については、月刊デイ2016年9月号「現場スタッフに役立つ 症状別・疾患別リハビリ」をご覧ください!





その他の記事

どうして居宅訪問が必要なの?
個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱやリハビリテーションマネージメント加算Ⅰ・Ⅱを算定するためにはご利用者の居宅を訪問し、在宅状況を確認することが義務付けられています。
居宅訪問はとても重要なことです。利用者の生活環境を知り、それに即したメニューを実施することで、機能訓練の効果は格段に上がります。

松本健史(まつもとたけふみ)
理学療法士/介護支援専門員/社会福祉学修士
NPO法人丹後福祉応援団勤務
大阪生まれ・関西大学法学部卒・九州リハビリテーション大学校卒業。
2014年本の出版、研修事業の「松本リハビリ研究所」設立。
著書に「認知症介護『その関わり方間違いです!』」(関西看護出版)「拘縮対応ケアハンドブック」(ナツメ社)「間違いだらけの生活機能訓練改善授業」(日総研)等がある。
介護従事者向けの「生活リハビリの達人」養成研修が話題。
●ホームページ
松本リハビリ研究所
●研修・原稿の依頼・問合せ
matumoto@helen.ocn.ne.jp