ご利用者の生活環境を把握するための
居宅訪問時のチェックポイント!
居宅訪問の機会を有効に使うために確認すべきポイントを、ご利用者の症状別・疾患別に理学療法士の視点でご紹介しています。

第5回 片麻痺の方の身体機能に合わせた生活づくり
本誌の連載では脳血管障害で半身に麻痺がある人の生活動作のリハビリメニューを紹介しました。
デイサービスの良いところは在宅生活とリンクできるところです。デイで生活動作を行い、「これは家でもできそうだ」ということを本人・家族にアドバイスしていきましょう。 利用者の「できる」がグッと増えていきますよ。

麻痺の状態を知る
本連載で紹介した生活期の「介護現場での麻痺の状態の評価」について、ポイントをおさらいしましょう。目安として以下の3段階で考えてみるとよいでしょう。

介護現場での麻痺の評価
評価 状態
①動作ができない 筋肉に力が入らない弛緩(しかん)した状態(ブラブラ)
筋肉に力が入り過ぎていて過緊張の状態(カチカチ)
②共同運動ができる 関節を自分の意志で動かせるが、かなりぎこちなく、実用的な動作はできない状態
③分離運動ができる 動きにぎこちなさが減り、実用的な動作が可能な状態




状態別 生活面での注意点、ご家族へのアドバイス方法
①動作ができない方
筋肉に力が入らない弛緩した状態
●リハビリのポイント
手をブラリと下ろしていることが多いので、どこかにぶつけてしまうことがないように、患側の肘を持つような動作が習慣化できるような声かけをしていきます。 よくぶつけてしまう、打撲やすり傷がよくできるような方には三角巾をすすめましょう。
寝るときや座っているときなどは患側の肘を持つようにします。また、患側を自分のお腹に引き寄せる体操などを行い、患側を守る習慣をつくります。
患側の肘を健側の手で支えます

●家族へのアドバイス
片麻痺で筋肉が弛緩していると、ちょっと引っ張られただけで肩関節が脱臼しやすくなります。 家族が引っ張って介助したりしないようにアドバイスし、脱臼していないか小まめに確認します。

筋肉に力が入り過ぎていて過緊張の状態
●リハビリのポイント
デイサービスで手指や固まった関節を動かす体操を行います。
入浴介助時に硬くなっている関節をほぐすとともに、清潔を保つようにしましょう(特に手指や股関節)。
※固まった手指の伸ばし方と上肢のストレッチは本誌8月号を参照

●家族へのアドバイス
動かさないでいると関節拘縮が進行することを本人だけでなく家族にも伝えましょう。 家族に関節の動かし方、不潔になりやすい箇所を伝えて、自宅でも清潔にしてもらうようにします。
②共同運動ができる方
関節が自分の意志で動かせるが、かなりぎこちなく、実用的な動作はできない状態
●リハビリのポイント
麻痺した方の手を補助として使えるような動作を促します。
  • タオルをたたむ(麻痺した方の手は、タオルが動かないように押さえるようにして使っていただく)
  • 紙や花の茎を切る(ハサミは健側で使い、麻痺した方の手で物を押さえるなど補助的に使う)
  • 自然と両手が出るような体操を行う(例:ボール体操)

●家族へのアドバイス
デイでできたことを家族に伝え、自宅でも実施してもらえるようアドバイスしていきましょう。
〈声かけ例〉
「今日、デイでタオルがたためたんですよ。ご自宅でも、テーブルにこんなふうにタオルを置いてあげると、たためますよ」
③分離運動ができる方
動きにぎこちなさが減り、実用的な動作が可能な状態
●リハビリのポイント
日常的な動作にトライしていきましょう。
  • 食べる…(例)柄の太いスプーンやバネ付き箸を使う
  • 書く…(例)柄を太くしたペンや自助具を使ってバイタルを書く
  • 着替える など
筆記自助具を使用し、バイタルなどを書く

麻痺があるからスプーンを使う、利き手交換して食べてもらう、などの対応をしているところも見られますが、まだまだ麻痺した方の手で食べられる可能性があります。 本誌連載で紹介したように、ジャンケンのチョキができるぐらいの軽度の麻痺(分離運動ができる手指)なら、次のような自助具を利用して、食事にトライしてみましょう。

自助具「バネ付き箸」

●家族へのアドバイス
デイでできたことを家族に伝え、自宅でも実施してもらえるようアドバイスします。
〈声かけ例〉
「今日、この福祉用具を使ったら上手に食べられましたよ。ご自宅でも使ってみませんか?」

リハビリについて
「片麻痺者の身体機能に合わせた、生活動作リハビリメニュー」については、月刊デイ2016年8月号「現場スタッフに役立つ 症状別・疾患別リハビリ」をご覧ください!


 


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どうして居宅訪問が必要なの?
個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱやリハビリテーションマネージメント加算Ⅰ・Ⅱを算定するためにはご利用者の居宅を訪問し、在宅状況を確認することが義務付けられています。
居宅訪問はとても重要なことです。利用者の生活環境を知り、それに即したメニューを実施することで、機能訓練の効果は格段に上がります。

松本健史(まつもとたけふみ)
理学療法士/介護支援専門員/社会福祉学修士
NPO法人丹後福祉応援団勤務
大阪生まれ・関西大学法学部卒・九州リハビリテーション大学校卒業。
2014年本の出版、研修事業の「松本リハビリ研究所」設立。
著書に「認知症介護『その関わり方間違いです!』」(関西看護出版)「拘縮対応ケアハンドブック」(ナツメ社)「間違いだらけの生活機能訓練改善授業」(日総研)等がある。
介護従事者向けの「生活リハビリの達人」養成研修が話題。
●ホームページ
松本リハビリ研究所
●研修・原稿の依頼・問合せ
matumoto@helen.ocn.ne.jp