第9回
吐く息に意識を向けてみると、
自律神経のバランスが調う
自律神経のバランスが調う
こんにちは。
今月も、こころとからだが健康になる『1分間でできる健康法』を紹介します。
えっ、「パニック障害」?
30代前半のころ、飛行機の中で突然手足の感覚がなくなり、呼吸をするのもやっとという状態になったことがあります。そのうち、目の前が真っ暗になり、猛烈な吐き気とともに、気を失いそうになりました。突然の出来事に驚きながらも、「あぁ、なかなかいい人生だったなぁ」などと呑気に構えているうちに、症状はだんだん良くなっていきましたが、けっきょく原因はわからずじまい。現地に着くころにはすっかり元気になっていたので、その後はしばらく忘れていたのですが、それから数日後、飛行機の中でまた同じような症状が現れたのです。その後も、飛行機に乗るたび同じような体験が続いたことから、知り合いのお医者さんに聞いてみたところ「パニック発作」に似た症状であることがわかりました。「パニック発作」は、電車や飛行機など閉鎖的な空間で起こることが多く、突然、動悸や息切れ、吐き気、手足のしびれなどが現れるもので、慢性的にかかるストレスが原因ともいわれています。
当時は年間100回以上飛行機に乗っていましたから、3日に1回は同じような症状が出るわけで、さすがにこれはなかなかたいへんでした。
「腹式呼吸」の効用
「なんとかこれを克服するいい方法はないものか…」
そんなとき、ふと思いついたのが「腹式呼吸」。ラジオの健康番組でパーソナリティーをしていたときに、相方のアナウンサーが「気持ちが落ち着いて、からだもラクになる」と言っていたことを思い出したのです。
試しに、予兆の段階で行ってみたところ、症状が現れる前にスーッとラクになりました。以来、発作が起きそうになるたび、腹式呼吸を繰り返しているうちに、予兆さえもなくなってきたのです。
腹式呼吸のような深い呼吸には、心身をリラックスさせて、慢性的なストレスを解消させる効果がある、ということを身をもって体験したのでした。
こころとからだは、呼吸とつながっている
呼吸が、こころとからだの状態に大きな影響を与えていることは、近年、末梢血管の血流量を測ることができる機械によって医学的にも証明されています。
ゆったりとした深い呼吸をすることによって、血液が末梢まできちんと流れ、心身がリラックスする、ということが明らかになったのです。
「息」という字は、「自らの心」と書きます。
こころが穏やかでリラックスしているときの、ゆったりとした深い呼吸は、こころとからだを健康へと導いてくれるんですね。
実践!1分間健康法
「呼吸」は、読んで字のごとく「吐いてから吸う」もの。
赤ちゃんが「オギャーッ」と泣いて(息を吐いて)生まれくるのも、亡くなるときに「息を引き取る」と言うのも、「吐いて始まり、吸って旅立つ」という呼吸の法則そのものです。呼吸法では「吐く息に意識を向ける」ことが大切なポイントになります。
ポイント1
息を吐く時間は、吸うときの2倍くらいの長さを目安に始めてみましょう。ヨガや気功などの呼吸法に共通する「吐く息に意識を向ける」ことが大切です。
ポイント2
息を吐くときにお腹をへこませて、吸うときに膨らませる「腹式呼吸」。
息を吐くときにお腹を膨らませて、吸うときにへこませる「逆腹式呼吸」。 どちらでも、心地よく感じる方法で行ってください。
息を吐くときにお腹を膨らませて、吸うときにへこませる「逆腹式呼吸」。 どちらでも、心地よく感じる方法で行ってください。
天と地を結ぶ呼吸法
まずは1分間(2~3回)を目安に行ってみましょう。慣れてきたら、心地よく感じる範囲で繰り返してください。

軽く数回ジャンプする(またはゆする)と、ほどよく力みが抜けて自然体になります

からだは地球の成分でできていますから、体内の情報を「還(かえ)す」イメージです

「人間」が、天と地の「間」で気の媒介をしているようなイメージです

終わったら、天と地の気をいただいたことに感謝しながら、丹田(たんでん:へその下あたり)に両手を重ねて意識を向け、こころを静めます。
「吐く」という字が「口に土」と書くのは「口」に表現される呼吸と「土(地球)」が、大気を通じてつながっていることを表しているのだと思います。
自分と地球は「呼吸」によってつながっている、そして、天と地の間で「呼吸」を通して気の媒介をしている…。
そう考えると、呼吸によってすべての存在とつながっていることが実感できます。
天は、いちばん身近な「呼吸」が自然の摂理を教えてくれるように、からだの仕組みを創ったのかもしれません。
息だけに、なかなか粋(いき)な計らいですね(お後がよろしいようで…)。
参考文献:『医者いらずになる 1分間健康法』帯津良一・鳴海周平著(ワニ・プラス)